
MEDICAL
緑内障について
緑内障と眼圧について
眼圧の正常値とは
緑内障は視野が欠けてくる病気です。
主な原因は「眼圧」です。眼圧の正常範囲は10〜20mmHgで、眼圧が20を超える高眼圧緑内障と日本人に多い正常眼圧緑内障(眼圧が正常)のどちらに対しても「眼圧下降治療」が効果的です。しかし、この2つの緑内障に眼圧下降治療をして目標眼圧に到達しても、視野が欠け続ける症例が存在します。これらのグループは眼圧下降治療だけでは、悪化を止めることはできません。
これまでは眼圧下降治療はまず点眼治療を行っていましたが、最近は「SLTレーザー」を第一選択にする傾向が増えています。点眼治療とSLTレーザー治療のメリットとデメリットを理解し、生涯に渡る眼圧下降治療の継続を忘れないでください。

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初期緑内障は19以下、中期は16以下、後期は14以下が推奨されています。しかし、この目標値をクリアしても悪化する症例があることは先に述べた通りです。眼圧”正常値”の話しは少しややこしいのです。これは単に「日本人の95%がこの範囲に入っています」という値です。仮に眼圧25の人で眼圧以外の検査異常を認めない場合はまだ緑内障ではない高眼圧症と診断します。このようなグループの経過観察をすると、生涯緑内障を発症しないグループがあるのです。高血圧だったが生涯脳出血を起こさないグループに似ているでしょうか。血圧は正常であったが脳出血を起こしたのが、眼圧は正常であったのに正常眼圧緑内障を発症したグループに似ているでしょうか。
これはつまり、視神経を構成する網膜神経節細胞が丈夫な人は眼圧が25でも大丈夫で、弱い人は眼圧が10であっても正常眼圧緑内障を発症してしまうということなのです。ここで重要なことは眼圧以外に網膜神経節細胞を弱くする原因を見つけ出すことです。当院ではこのようなことを踏まえて、眼圧以外の緑内障を悪化させる要因について、時間をかけて解説しています。視神経を強く丈夫にする「栄養素療法」や「生活習慣改善プロブラム」も実践していただいています。
緑内障治療について
緑内障治療で最も重要なこと

緑内障治療で最も重要なことは「眼圧下降治療」を生涯続けることです。眼圧ストレスを低減して神経細胞死を予防することが治療の基本です。日本の緑内障治療状況は、初診から3ヶ月後にもう3割が脱落し、2年後も治療を継続している人は6割で、4割もの人が脱落しています。
大半の緑内障は数年〜十数年で徐々に進行するため、知らないうちに視野が悪化しています。気付いたときにはすでに重症化していることもなくありません。軽症のときから治療を継続していくことが大切です。そうしてもうひとつ。眼圧以外の悪化要因を見つけ出すことも重要です。
緑内障治療の現在と未来
すべての緑内障治療の標準治療は、「眼圧下降治療」です。その種類は以下の3つです。
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点限治療
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レーザー治療(SLTを含む非観血的手術)
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外科手術(観血的手術:切開をし出血を伴う処置)
手法は異なりますが目的は全く同じです。「眼圧を下げること」です。
しかしこのところ眼圧が十分下がっているのに悪化する緑内障が問題となっています。
眼圧が十分下がっているのに悪化する緑内障
眼圧だけが悪化原因ではなく、様々な危険因子を原因とする緑内障があります。目標とする眼圧が治療で維持されているにもかかわらず、視野が悪化し病状が進行するグループで、このタイプの緑内障を克服するには眼圧下降一辺倒の治療では対処できません。当院ではこのタイプの緑内障治療に、特に力を入れています。
また、全緑内障症例のごく一部ではありますが、点眼、レーザー、内服治療に抵抗する高眼圧緑内障で観血的手術を必要とする症例は入院施設のある医療機関をご紹介致します。
緑内障治療の選択肢
3つの緑内障治療
緑内障治療には複数の治療の選択肢があります。当院では患者様の病状や要望に合わせて、適切な治療法をご提案しております。
緑内障点眼の功罪
緑内障治療で最も重要なこと
緑内障点眼の「功」は眼圧下降作用、「罪」は副作用です。副作用に困っている患者さんが増えていることは医療界においても問題です。呼吸器科的には、喘息が悪化したり強い喘息発作を誘発することがあります。タバコの煙などの有害物質が原因で肺が炎症を起こして発症する慢性閉塞性肺疾患(COPD)や間質性肺炎の悪化などが知られています。循環器科的には、低血圧、失神、徐脈性不整脈、心不全、心停止などが誘発されます。これらは、β遮断薬(βブロッカー)の点眼で起こる可能性があります。発生すると命に関わることがあります。一人暮らしのご老人はとくに気をつける必要があります。夜間や就寝中に発症すると救急性が発生し助けを求められない可能性があるからです。ここまでは全身の副作用についてお話しをしました。
ここからは眼球周囲の局所の副作用についてのお話しです。このところ形成外科的には、緑内障治療をしている患者さんの「眼瞼下垂」の症例が増えているということです。増加理由は緑内障有病率の増加や高齢化およびそれに伴う長期間の点眼治療で、これらが眼瞼下垂を誘発しています。緑内障で視野が狭くなっている上に、さらに眼瞼下垂で上方視野が狭くなることは、患者さんにとっては不利益です。
もうひとつ重大な緑内障の病態の本質にも関わる副作用があります。それは「眼球陥凹・陥没・目の落ちくぼみ」です。眼瞼下垂と同様、老化によって自然に起きてくる現象と考えられがちですが、実はプロスタブランジン製剤点眼を使用している方は、相乗的に目の落ちくぼみがひどくなります。眼瞼下垂は手術で対応できますが、眼球陥凹は経過観察が現状です。この現象がどのような仕組みで起きてくるかが医学的に解明されてきました。
美容上の問題であるかのように考えがちですが、実は緑内障進行の仕組みに関連します。世界の眼科医は、緑内障の病態と緑内障点眼の「功罪」について再検討すべき時に来ています。
眼球陥凹改善プログラム
当院では全国に先駆けて、眼球陥凹をそのまま経過観察にするのではなく、以下に述べる方法でその改善プログラムをご提案しています。
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栄養素療法
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生活習慣改善プログラム
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適切な薬剤の紹介(点眼薬、その他)
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プロスタブランジン製剤点眼中止後の治療方針
点眼副作用の治療
「眼球陥凹」「皮膚色素沈着」再生治療
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インスリン点眼(type-B) 10,000円/月
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細胞外マトリックス再生促進剤 5,000円/月
※最低6ヶ月以上の治療期間を見込みます。
※病状の程度により治療期間は異なります。
正常眼圧緑内障について
神経変性疾患の一形態
正常眼圧緑内障は、眼圧が正常範囲内であっても視神経が脆弱化し、視野や視力の低下を引き起こす疾患です。高眼圧緑内障と異なり、目標眼圧に低下後も進行するため、非常に扱いが困難です。
日本における緑内障患者の70%がこの正常眼圧緑内障に該当し、多くの症例が眼圧管理だけでは進行を止められず、失明のリスクに直面しています。
その病態メカニズムは未だ完全には解明されていませんが、遺伝因子、異常タンパク質の蓄積、炎症、循環障害、酸化ストレス、糖化ストレスなどの複合的な要因が関与していると考えられています。
このことから、緑内障は単なる眼疾患ではなく、アルツハイマー病やパーキンソン病、ALSなどと同様の「神経変性疾患」に分類されると考えられます。当院の調査では、認知症患者の60%に緑内障の合併が確認されており、両疾患の関連性が示唆されています。※認知症専門クリニックとの合同調査による

正常眼圧緑内障に対する治療方針
篩状板障害性視神経症 (lamina cribrosa disability optic neuropathy ;LDON)の概念に基づく治療
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当院の治療方針は、正常眼圧緑内障を篩状板障害性視神経症(LDON:高柳院長が提唱する病名)として捉え、以下の理解に基づいています。
正常眼圧緑内障における網膜神経節細胞(RGC)の死滅は、異常タンパク質の蓄積による視神経症を背景に、慢性炎症に伴うマトリックスメタロプロテアーゼ(MMPs)の産生が視神経支持組織である篩状板の細胞外マトリックス(ECM)を分解し、さらに非生理的AGEs架橋(悪玉架橋・老化AGEs架橋)によるコラーゲン強度の低下が篩状板の変形を引き起こし、軸索障害を誘発する複合的な神経変性疾患と考えられます。
この理解に基づき、当院ではLDONに対して、慢性炎症の抑制によるインスリン抵抗性の改善と異常タンパク質の制御、視神経修復過程における軸索・シナプス・樹状突起・スパインの再生促進、そして細胞外マトリックスの再構築による篩状板の修復を目指した総合的な治療アプローチを採用しています。
治療の主な特徴
神経細胞を減らさず視神経を再生し、視野回復を目指す
神経細胞の保護:視神経線維の減少を抑制
視神経の再生促進:失われた視野の回復可能性を高める
点眼薬依存からの脱却:従来の眼圧下降薬による副作用を回避
食生活改善プログラム
当院では、患者様一人ひとりに合わせた栄養素療法プログラムをご提供しております。初回診察時には、これまでの生活習慣や食事内容を詳しくお伺いし、それをもとに個別化された食事プランをご提案いたします。このプランでは、患者様の健康状態に応じて制限すべき食品と積極的に摂取すべき食品をお示しします。
従来、中枢神経細胞は再生が極めて困難とされてきました。しかし、神経細胞の再成長を阻害する毒性物質を排除し、同時に神経再生に必要な栄養素を積極的に摂取することで、中枢神経細胞の活性化を目指します。さらに、この方法はインスリン抵抗性の改善との相乗効果も期待できます。
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